1787m
 大分県久住町
 歩くのが楽しい雨ヶ池
長者原から大船山に登るなら、雨ヶ池コースが楽しい。長者原駐車
場から登山コースに入ると、まもなくコースは二手に分かれる。
直進はすがもり越えのコースで、左に折れる方が雨ヶ池越えのコー
スだ。すがもり越えは岩場が多く、雨ヶ池コースは樹林帯で森林浴
が楽しめる。樹林帯が開けて草台地になったら、もう雨ヶ池だ。名の
通り雨水だけがたまる池で、水面に映る逆姿の三股山が美しい。
前方には目指す大船山や平治岳、坊ヶつるが見え始める。山歩きが
楽しくなって、足がどんどん前に進む。忘れかけた風景だ。
 坊ヶつるのすすきの
雨ヶ池から水たまりをまたぎ、アセビの群落をぬうようにして坊ヶつる
に下る。9月の坊ヶつるは一面すすきのだ。左からは湯沢山腹を経て
きた登山道と一緒になり、右へ進むと法華院温泉へ行く。
鳴子川と呼ばれる小川の水は冷たい。この小川を渡と坊ヶつるキャン
プ場で、夏にはカラフルなテント村が出現する。避難小屋を過ぎたら
直ぐに左へ平治岳のコースを分けるが、直進して山際から攻め登る。
 展望に恵まれた山頂
坊ヶつるからの登山コースは、どこから振り返っても景色がよい。
正面に三股山、左にすがもり越えから下った法華院温泉の山荘、
その上に硫黄山、久住、中岳、天狗ガ城などが一目で見渡せる。
次第に石ころが多くなると8合目の段原に着く。ここから仰ぎ見る
大船山の威容は、実に気品がある。
左にとってドウダンツツジの間の尾根道を行く。途中、左の灌木林
に避難小屋が設けられている。最後に岩の多い急坂をひと登りで
大船山の山頂に立つ。写真に浮かぶ遠くの山は阿蘇山群だ。
 7合目から冬の大船山を仰ぐ
1月の大船山は全く人の気配がない。夜明け前
に大船林道ゲートの登山口からランプを照らして
出発。まもなく胸を突くような急坂となるが、しばら
く登ると下湯沢山の肩に上がる。このあたりから
夜も明け、雪の重みで垂れた杉の枝をストックで
払いながら進む。左に鳴子川の水音もいっそうの
清涼感を添える。更に自然林を進むと、やがて坊
ヶつるの歩道に出る。この日は積雪も多く30cm。
全く足跡のない新雪はまぶしくて美しい。
写真は一面樹氷の中腹から山頂を仰ぐ。
 樹氷と風に舞う雪が美しい
積雪も次第に増して、コースは膝までが雪に埋まるように
なる。周囲の樹木の枝が雪の重みで垂れ、雪が足下を上
げるので、人の通れるスペースの無いところは、雪をラッ
セルしながら張って登る事も多くなる。時間もかかり夏山
の3倍は疲れる。登山道も見渡す限り人の気配がない。
ときおり小動物が歩いた足跡が新雪に有るだけだ。
きれいな樹氷の上を見上げると、風に舞う粉雪が太陽の
光でキラキラと光って美しい。冬山ならではの光景だ。
 振り返ると久住の山々が
100m登るのに何度か立ち止まる。振り返ると他
の久住の山々が見えるが、ときおり冬の雲が山を
包み視界を遮る。心細くなる瞬間だ。
正午前に山頂到着の予定時間を過ぎている。
冬の日没を考えると午後1時がタイムリミットだ。
 山頂の気温は零下10度
段原からのドウダンツツジの尾根道は腹這いの連続だ。
山頂直前の険しい岩場は風も強くなってきた。やたら足
を踏み込むと吹きだまりで、胸まで雪に埋もれることも
ある。脱出に体力も疲労する。お互い声をかけ、無事を
確認しながら山頂に着く。時計の時刻は午後1時だ。
風が強く、携帯の温度計は丁度零下10度、一休みする
環境ではない。直ぐにカメラを出して記念撮影。グローブ
を脱いだ素手は冷たいという感覚より痛い。頬はこわばっ
て口ひげは息が凍って白い氷状。
山頂の積雪は強風のため、飛ばされて思いの外少ない。
直ぐに下山をはじめ、8合目の避難小屋で一休み。ガス
バーナーに火を点けて即席ラーメンを作る。持っていった
ペットボトルのお茶は半分以上凍っている。ボトルの口を
棒でつついて飲む。体が少し温まったら直ぐに下山。坊ヶ
つるまで下ったら日も沈みかける。鳴子川の水音が聞こ
える頃にはランプを照らして下山する。
写真はつかの間の山頂から、次の目標祖母、傾山方向
を望む。
 メニューへ戻る