日田義民伝概説6

** 日田義民伝概説シリーズNO,6

 上之通り言上し奉り候御事,恐れ多く存じ奉り候えども,拾弐年以来凶年打ち続き, なお又新規の品々御吟味に付,御地方にては他借差し支え,極々困窮仕り百姓相務め難く 存じ奉り候間,上お願い申し上げ候通り,夫食拝借願い上げ奉り候.

万一御上様より御拝借御叶い遊ばせられざる御儀に候はば,上助合石代銀拝借願い奉り候 百姓困窮の儀は,御江戸より御検使様お越し下され,何とぞ百姓相続き仕り候様に願い上 げ奉り候.

尤も上村村大小百姓共銘々罷り上がり,御訴訟申し上ぐべく候処,遠国殊に上の通り困窮 にて,当時送り兼ね候う百姓共に御座候えば,さし当たり銀用の償いも成り難く,これに 依って上村村惣代是非無く,この度拙者ども御訴訟申し上げ候,上の条条逐一御勘弁の上 ,御慈悲をもって,当村村大小百姓末々相続き仕り候様,成し下され候はば広大の御救い と有り難く存じ上げ奉り候.

 全文のしめくくりである.12年来の凶作が続き,しかもお互いに困窮して,借りる 事も出来ない状態であるから,夫食の拝借か,助合石代銀の拝借をお願いします.  私達の困窮の状況は,御検使様を派遣してしらべてください.

村村の百姓が全員お願いに上がるところでありますが,遠国でもあり,困窮しております ので路銀もなく惣代として私達がお願いする次第です,百姓の生活が出来るように,御救 いに下されば有り難く思います.

延享3年寅

 正月22日                  日田

                           郡13ケ村

                         玖珠

                             百姓連判

*注:横書きの為 右記 を 上記へ,右を上に書き改めた.

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 また直訴状の原案の一つであろうが,尾当町中島秀雄氏所蔵の訴状には次の箇条もしる されている.

(1) 百姓には倹約の仰せ付けをなされるが,御役所では倹約の必要もないのか,御長 屋(役人等の住居)を,間もおかないで二度建て替えられている.其の他に修繕や御普請 も多く,畳等はだいぶん造り替えになり,その度に多額の出銀(費用)もさせられている .もっともこれは宰領(さいりょう)の庄屋が悪いのかもしれぬが,私達にはよくわから ない.

(2) 御役所の前と后に,天満宮と稲荷社を建てられ,祭礼の日を極めて,豆田,隈, 両町や近村の者を寄せて相撲をとらせて見物されるが,その賄い(まかない)(費用) も,私達の出銀になる様にきいている.

(3) 釣り鐘を拵えて(こしらえ),時の鐘と名付けて,つかわせておるがこのような ものは無くても差し支えなかったのに,このような無駄で,倹約をしても,凶年続きで困 窮している百姓はいよいよ困窮する.

(4) 宇佐神宮に奉幣使の御いでの時も,接待その他の多額の諸経費は,すべて各村村 に割り付けて徴収し,百姓には大きな負担であった.これにも宰領(さいりょう)の庄屋 達の,不正があったかとも思われる.

 次に日田市に依托して,博物館保管の訴状は

(1) 日田郡巡視の際に,代官御用提灯の少し破損を怒り,手槍で十二町村の庄屋に重 傷を負わせた事.

(2) 玖珠郡巡視の時に,宿泊予定の南大隈村庄屋宅が,同家の都合で隣家に変更され ていたので,上を侮蔑するものと憤り,庄屋の面部を乱打して,庄屋は百ケ日の怪我をし た.横暴ぶりを記しておる. 

 その他にも訴状はないが,婦人の使用する木綿車,織機,住宅の坪数,茶,漆,櫨,梶 ,牛馬まで課税したことが伝えられている.

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