T調査の経過

T調査の経過

1。調査に至る経過

本遺跡は日田市におげるサッポロビール叶V九州工場の進出に伴う工場用地取得造成
事業に先立つ事前調査として実施された。

当初、工場予定地は三隈川南岸の上野台地が有力な侯補地とされ、当地区は日田市でも
有数の遺跡密集地であるため相当な数の遺構・遺物の出土が予想されていたが、その後
計画の変更が行われ、より東側の高瀬地区に移るはこびとなった。

今回調査を実施した高瀬地区については、市経済部企業立地推進室より上記の内容に
伴う埋蔵文化財の有無の確認に関する照会文が提出され、これを受げて市教育委員会
では当該事業予定地が遺跡である可能性を十分に含んでいたため、同事業予定地
(全体面積約154,000u)のうち約10,000uを対象とした試掘調査を
行った。

試掘調査は、山林部を多く有していたため約100ヵ所のトレンチを設定して平成
8年12月9日から平成9年1月30目まで人力による調査を行った。

この結果、トレンチにおいて竪穴住居跡、土坑、柱穴などの遣構が確認されるととも
に多くの遺物が出土した。

このため企業立地推進室とその取り扱いについての協議を行い、事業予定地のうち
9,000uを対象とした発掘調査を実施することとした。

調査期間は、平成9年2月から約2ヶ月間とし、その後出土遺物の整理を行うととも
に平成9年度中に報告書作成を含めた全ての工程を終了することとなった。

2。発掘調査の経過

発掘調査は試掘調査の結果をもとに協議で決まった区域を対象に実施することとした。
詞査は平成9年2月10日から始まり、まずバック・ホーによる表土除去作業を南側
斜面から行った。特に遺構の発見はなく、わずかに黒曜石の破片が出土しただげで
あったが、念のため南側斜面にはグリッドを設定し掘り下げた結果、遺溝・遺物の
発見には至らなかった。

その後、斜面がゆるやかに傾斜し始める位置で最初の竪穴住居跡が検出された。
調査前は畠地として耕作されていたため、北側が大きく削平を受げているようである。
調査区中央はコンターが安定しており、遺構が確認できる場所のなかで最も高い位置
にある。周辺から検出された遺構は、比較的遺存状況もよかった。

また、遺構の密集度は中央付近に高い状態を示しており、特に西側には柱穴が集中して
いた。

調査が北側に移ってからは東西で竪穴住居跡が検出されたが、西側の状況に対して
東側ではひとつのまとまりをみることができた。以上、遺跡全体の遺構検出の数は
決して多くはないがその反面、局辺台地との比較から過疎地であることの間題点を
考えるべきである。

調査終盤の4月に入り雨の多い日が続いていたが空中写真撮影も雨のなか行われ、
ほぼ予定通りの4月23日をもって調査は終了した。また、出土遺物の整理作業は
平成9年2月12日〜同年6月30日まで行った。

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