T調査の経緯

T調査の経緯

1。調査に至る経過

調査対象となった森ノ元遺跡周辺には、九州横断自動車建設によって発掘調査された
尾漕遺跡や民間の住宅団地建設事業により発見調査された馬形遺跡などがある。

今回これらの遺跡周辺や隣接地を含む一帯で、ウッドコンビナート建設に伴うアクセス
道などを目的とした地方道改修事業(市道田島有田線バイパス改良工事)や農業所得
の向上と農業環境整備を目的とした池辺地区県営ほ場整備事業(農地利用権設定特別
促進事業)、求来里川河川改修事業などの開発事業が同時に事業計画決定され、照会文
が提出された。

このため関係機関と協議を行い含意を得た上で、平成9年4月22日、県教育委員会
と市教育委員会双方で、遺跡の有無の確認調査をし、その費用については河川改修分
は県が、それ以外を市が国庫補助事業で試掘を行うこととした。

試掘調査は、平成8年度に試掘調査を実施した区域を除いた以外はすべて行うことと
なったが、対象区域が広範囲に及ぶため、調査区をAからD区までの4地区に分け
(第1図)、機械と手作業により平成9年6月22日から7月3日まで延べ79本の
トレンチを設定して行った。

試掘調査の結果、各地区のトレンチより遺構・遺物が検出されたことから、事業実施
範囲を発掘調査した場合約70,000uにも及ぶ膨大な面積となるため、その後
県文化課を交えて県耕地課・市農政課と協議を行い工法変更等により遺跡の保存を図る
とともに、やむをえず工事により遺跡の失われる地点については、発掘調査の範囲と
期間、費用についての協議を進め、河川改修区域については県が、市道建設とほ場
整備事業区域については市が発掘調査を実施することとした。

ほ場整備事業調査対象区域で市が発掘対象としたのはD区(尾漕遺跡)と今回新たに
発見され、岡知遺跡に新規登録されたA区(森ノ元遺跡)についてであった。

第2図に示すとおり、試掘調査時に遺構の確認されたトレンチの大部分は、ほ場
整備地区の中央を通す市道建設区域より東部の高い位置であった。そこでこの地区
では、遺構の密度の高い市道より東側については全面盛土による保存を行い、それより
西側の切土部分についてのみ発掘調査の対象とすることとなった。

またこれについては市道部分とほ場整備部分とが隣接する一つの遺跡であることから、
市土木課を含めた協議で、調査対象面積を案分することにより調査費を組むことで
合意に達し、平成9年7月31日に県耕地課と協議書を取り交わし、8月1日には
委託契約書を締結、9月1日より発掘調査に着手した。

なおA区において確認された遺構の大部分は保存されることになったため、試掘調査
の成果として今後の周辺開発等の参考となることから、トレンチ内より出土した主な
遺物については第3図に図示し説明を加えることにする。

A区の試掘調査では計35本のトレンチを設定した中で、9ヶ所において遺構の存在
が確認された。

(第2図)また各トレンチの中からは古墳時代から中世にかけての遺物が発見された。
中でも30号トレンチからは椀や高坏などの5世紀代の特徴をもつ土師器がまとまって
出土した。(第3図)

1は白磁椀で口縁部は平坦となる。2は須恵器坏身で比較的古式の様相を呈する。
3は龍泉窯系青磁椀である。4〜6は椀で口縁端部は小さく外反する。
7・8は高坏で、7はゆるやかな曲線を描きながら口縁部へと伸びる。
8は体部は椀状となり一段退化した稜をもつ。

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