掛け軸 書 平野五岳 12

酔後吟 寒厨有酒不知寒 差覚酔中天地寛 駑馬寧堪千里遠 鷦鷯早占一枝安 従心所欲齢初及 与世推移事亦難 富貴功名皆是夢 殷勤何必慕邯鄲 寒い台所に居ても酒があれば寒さを感じない。 酔いの気分で見る天地も広いものだといくらか意識している。 鈍い馬が却って千里の道に堪えるのであり、みそさざいは早くから安定した必要な一本の枝にとまる。 心の思いどおりに行動しても道徳に違反しないという年齢七十に達して、世の変遷に自分を適応させることがいよいよ困難であるのがわかってきた。 世上の富貴や功名は全て、夢のように儚いものでどうしてねんごろに趙の都邯鄲の華美な風潮を慕う必要があろうか。 訳は五岳上人詩集より