98/10/30 11:00:16 広報ひた 咸宜園(11/1) □□□□□ 咸 宜 園 −5 □□□□□ い ろ は 歌 「鋭きも鈍きも ともに捨てがたし 錐と槌とに使いわけなば」 これは、淡窓先生の「いろは歌」の最後、「す」の項に書かれている言葉で、咸宜園 の教育の特徴として、「休道の詩」と並び称される有名な一句です。 教育というものは個性を尊重しなければならない。つまりその人に合った教育をしな ければならないといわれます。 咸宜園の教育機構それ自体が、各自のそれぞれの天分と努力に応じた成長を期待でき る組織になっていたように思われます。 淡窓先生が、塾生を戒諭するために戯作され、それを門人劉新が写本したというこの 「いろは歌」にも、それが見えます。 咸宜園出身者は、それぞれ多方面に個性のある道を歩いておられるとともに、世の流 れに迷うことなく、それぞれの分野で、功を積み名をなしているように見えます。 いずれも、意欲的な生活ぶりがうかがえますし、これらの人々が書かれ、残された詩 文などを見ると、いずれも咸宜園教育の精神的な香り高さが感じられ、咸宜園の雰囲気 が見えるようです。 今年の9月下旬には咸宜園第一の秀才といわれた中島子玉のご子孫ご夫妻が、また、 10月上旬には咸宜園最後の塾長といわれる勝屋馬三男の孫娘ご夫妻が咸宜園跡を訪問 されました。 これらの人々をはじめ、咸宜園跡を訪れた人々に接して感じることは、咸宜園の教育 が個性を生かすという敬天の真意に発し、そこで学ぶ塾生が己の本性に対する深い自覚 を持ち、俊秀、英才の中にあった多数の平凡な人々も、己を磨くことに全力を注いだこ とがわかります。 その結果、現代風にいえば各自が独立独歩の道を見出し、その道を将来に向けて、努 力精進している姿が見えてくるのです。 写真・文/咸宜園解説者 後藤 孝広瀬淡窓物語の表紙に戻る。 元に戻る。 |