ハンセン病訴訟
今回、熊本地裁でハンセン病国家賠償訴訟 の判決が出るという事で
マスコミでもこの裁判の意味やハンセン病の事などが取り上げられ、
わたしも、この病の歴史や差別の状況などいろいろ知らなかったことが
解って来ました。

そして、昔見た映画「砂の器」のなかの遍路の親子が旅をするシーンを思い出しました。
http://www11.u-page.so-net.ne.jp/pf6/maiko-s/utuwa.htm

映画では、犯人の殺人の動機は自分の過去を消し去るためだったのですが、
自分たちにやさしくしてくれた恩人である人をなぜ殺さなければならなかったのか
解りませんでした。
しかし、ハンセン病の事を知るにつけ彼(犯人)の殺人をしてまで消し去りたい
過去が理解できるような気がしてきました。

かって、この病気は原因が不明で、効果のある薬や治療法がみつからず、伝染性の
不治の病とされていました。また顔面や手足にひどい潰瘍ができて醜い形相となり、
悪臭を放つことから、人々から忌み嫌われてもいました。

そのために家族の中に病人が出ると、村八分にあい一家心中するか村を出て行くしかない
などその村では生きていけなくなるのです。
だから病気になると家族を守るため密かにふるさとを離れ、放浪して物乞いをしながら
生活するようになっていったのです。

明治になって近代国家の仲間入りをしたかった政府は
諸外国から放浪して野放しにされてるらい患者(ハンセン病の患者)に対する施策
(なぜ保護しないのかという)を非難され収容隔離する事になります。
治療のための保護隔離というのではなく、あくまでも体裁を繕うためです。

徹底的な隔離が始まったのは戦前で、「無らい県運動」からだと言われています。
日本人は非常に清潔を好む民族であるそうなんですが、この潔癖症が
ハンセン病を根絶やしにしよう、この県から一人も出ないようにしよう
と言う運動になり患者を見つけては収容施設に送り込むと言う悲劇を生んだのだそうです。
この運動も、必要以上にハンセン病を怖いうつる病気だと住民に誤認させる
結果になり、患者自身もその家族もますますひどい差別の対象になって行きました。
この時すでに、政府の方では伝染性は低く隔離の必要はほとんどないということは
解っていたのですが・・

また、収容した患者に対しては治療という治療もせず、予算のなさから粗末な食事
で、患者自身が日常の雑役から重傷者の看護までさせられ、罪人のように行動や言動
までが制限される生活を強いられました。また逆らうと「特別病室」と呼ばれる
過酷な重監房に入れられました。
http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Himawari/8952/news/news7/news7.html

そのような隔離政策は1997年に「らい予防法」が廃止されるまで続いていたのだ
そうです。
1946年に日本でもハンセン病治療薬の合成に成功し、不治ではなく治る病気
となったにもかかわらずです。
私自身、ハンセン病(らい病)という言葉は知っておりましたが
こういう歴史があり、悪法ゆえに90年もの長い間、非人間的な扱いを受けてこられた事
優性思想から、遺伝病ではないのに子供を作ってはいけないという法を作り
子孫を残すという生命としてあたりまえの権利さえ奪ってしまっていたことは知りません
でした。
今回の判決は「らい予防法」の隔離規定の違法性についても立法上の不作為の違法性にも
言及した内容でした。
国は、この判決を重く受け止め1日も早く国家賠償と謝罪をしてあげて欲しいと思います。

今現在、かっての療養所には高齢でしかも長年の隔離政策から社会復帰できない
お年寄りが住んでおられるそうです。病気より、療養所での過酷な環境が
さらにひどい後遺症となっていまだに苦しめられています。

このことを今まで知らなかった自分にも責任を感じました。
わたしがこれから出来る事はなんなんだろう、そう思いました。
ハンセン病の(特に年長者のなかにまだ根強く残っていますが)間違った認識を
改めてもらおうと、いろんな啓蒙活動がされているみたいですが、
私は子供たちに、そして友達に私が知りえた情報を伝えようと思っています。
出来るだけ正確に!
今も残っている偏見や差別の根っこには、部落差別もそうですが
当時の指導者の思惑が入って、必然的に作り上げられたものが多いように思います。
こういうことを繰り返さないためにも子供を育てる親がそういう目で歴史を学び、
正しい情報を得て、自分自身判断を誤らないようにする事が大事だと思いました。

最後に参考とさせていただいたH・Pの中の1節を引用して終わります。

「歴史家クルティウス・ルーフスは「歴史は繰り返す」と言う有名な言葉を残しているが、
その言葉通りライ対策はエイズ対策となって、現代によみがえったのではないか。
歴史を正しく理解し、過ちを繰り返さぬ努力をしてこなかったことが、
今回のHIV感染者に対する過ちにつながっているように思えてならない。
差別・偏見を生まないためには、単に過去の歴史を暗記するのではなく
そこに隠された社会的事実を見出し、現代の社会を常に見守って行くことが必要である。
そして、再びハンセン病の歴史を繰り返さない努力をすることが、今まで辛さと憎しみの
中で亡くなっていった多くの患者に対するせめてもの償いとなるのではないだろうか。」


メールで控訴しないで運動に参加しました


このメルマガを発行した後、ハンセン病問題に取り組んでおられる方からメールいただきました。

私は高校生の頃からハンセン病の療養所に出入りして
ずっと非道な現実に心を痛めてきました

原告は高齢で重い後遺症、その他の病気もある方々です。
国が控訴したら、彼らは無念のまま消滅することになります。
絶対そんな非道なことは許せません。
黙っていれば、通常のプロセスを踏んで、控訴されます。
みんなで声を大にして、今こそ叫ぶ時なんです。
どうか よろしくお願いします

控訴をしないように国に要請をするメール運動に参加して欲しいということでした。
勿論、快諾してわたしの所属しているMLや、友だちにメールで要請メールを出すように
お願いしました。
そして、ついに小泉首相の英断と言うか、国の控訴断念のニュース!
すごく、感動しました。少しでもメルマガがお役に立てたのならこんな嬉しい事はありません。


メルマガに寄せられたコメント
2001/05/18 10:24:40
よっちゃん さん 現在の大人や子供のいじめにも皆んなまだ無関心が多いです